自宅録音を始める:最低限そろえるべき機材

まずは「録る・聴く・編集する」に必要な道具だけを揃えましょう。高価な機材よりも、正しい組み合わせと基本設定が大切です。

最低限コアになる5点

  1. パソコン(Windows/macOS)… DAWを動かす本体。メモリ16GB以上が快適。
  2. DAWソフト … 録音・編集・ミックスを行うソフト(例:Studio One、Logic Pro、Ableton Live、Cubase、Reaper)。
  3. オーディオインターフェース … マイク/楽器の音をPCへ取り込む心臓部。ASIO/Core Audio対応。
  4. マイク … ボーカルや生楽器用。最初はダイナミック1本でOK。
  5. 密閉型ヘッドホン … 録音時のクリック漏れを防ぎ、編集の基準に。

ギターやベースを直接録る場合は、シールド(TSフォーン)を忘れずに。マイク使用時はXLRケーブルマイクスタンドも必要です。

各機材の選び方と価格目安

1. オーディオインターフェース(最優先)

最低でも「マイク入力×1、楽器入力×1、ヘッドホン出力×1」があるものを。ASIO/Core Audioドライバで低レイテンシーが出せるモデルを選びます。

  • 必要機能:48Vファンタム電源、ダイレクトモニター、入力ゲインメーター。
  • 目安:エントリー帯 ¥10,000–20,000(2イン/2アウト)。
  • ポイント:後でチャンネルを増やしたい場合は4イン以上の上位機種も検討。

2. マイク(最初はダイナミック推奨)

部屋の反響や環境音が気になる家庭では、ダイナミックマイクが扱いやすいです。繊細に録りたいナレーションやアコギ中心ならコンデンサーも候補。

種類 長所 短所 向いている用途
ダイナミック 環境ノイズに強い、頑丈、手頃 高域の繊細さは控えめ ボーカル、ギターアンプ
コンデンサー 解像度が高く繊細、広い帯域 部屋鳴りやノイズを拾いやすい、48V必要 弾き語り、アコギ、ナレーション
USBマイク PC直結で手軽、配信向き 同時多本数やレイテンシー管理に制限 ナレーション、ボイスチャット

目安:ダイナミックは ¥8,000–15,000、コンデンサーは ¥12,000–25,000 から。

3. 密閉型ヘッドホン

録音時のクリック漏れ防止に密閉型が必須。長時間つけても痛くない装着感を優先。

  • 周波数がフラット寄り、着脱式ケーブルだと便利。
  • 目安:¥7,000–15,000

4. DAWソフト

バンドル版(インターフェースに付属)からでも十分始められます。将来やりたいことに合わせて選択。

  • 作曲・打ち込み重視:Ableton Live / Studio One
  • 録音・編集重視:Cubase / Logic Pro(Mac) / Reaper
  • 目安:無料〜¥30,000台(入門グレード)

5. ケーブル・スタンド・小物

  • マイク:XLRケーブル(3m前後)。
  • 楽器:シールド(3–5m、静電ノイズが少ないもの)。
  • スタンド:ブーム式が汎用的。ポップガードで破裂音対策。
  • バックアップ:外付けSSDやクラウドにプロジェクトを二重保存

接続と初期設定(5分)

  1. オーディオインターフェースのドライバ/ユーティリティをインストール。
  2. DAWのオーディオデバイス設定で当該インターフェースを選択。
  3. サンプルレートは 44.1kHz または 48kHz、バッファは録音時128–256、編集時512–1024を目安に。
  4. マイク入力はハイパス(ローカット)を軽く入れ、ゲインはピークが -12〜-6 dBFS 付近になるよう調整。
  5. 遅延が気になる場合は、インターフェースのダイレクトモニターを使用。

最小接続例(ボーカル録音)

マイク(XLR) ──> オーディオインターフェース ──USB──> PC(DAW)
                                    │
                              ヘッドホン出力 → 密閉型ヘッドホン

ギター直録りの基本

ギター(シールド) ─> インターフェースのHI-Z入力 ─USB─> PC(DAW)
DAW内でアンプシミュレーター(プラグイン)を挿す

余裕が出たら追加したいもの

  • モニタースピーカー(ニアフィールド)… 最終の音決めに有効。
  • MIDIキーボード … ドラムやシンセの打ち込みが快適に。
  • 簡易吸音材 … 反射を抑えボーカルが録りやすく。
  • DI/リアンプボックス … 生楽器のノイズ対策や後処理の幅を拡張。

よくある質問

USBマイクとオーディオインターフェース、どっちが良い?

一本だけでナレーションや配信中心ならUSBマイクは手軽。楽器も録る・将来拡張したいならインターフェース+XLRマイクがベターです。

ヘッドホンだけでミックスして大丈夫?

可能ですが、低域やステレオ感の判断が難しいことがあります。最終確認にモニタースピーカー、または複数の再生環境(スマホ・車など)での確認を推奨。

ノイズが乗る/音が小さいときは?
  • ゲイン上げすぎ(クリップ)や電源ループを確認。
  • マイクに合った入力(マイク/ライン/Hi-Z)を選択。
  • コンデンサー使用時は+48Vを有効に。
  • USBハブを避け、PC直挿しに変更。

購入前チェックリスト(保存版)

  • インターフェース:48V・ダイレクトモニター・ASIO/CoreAudio・2in/2outを満たす。
  • マイク:ダイナミック(XLR)から始める。XLRケーブルとスタンド、ポップガードはある?
  • ヘッドホン:密閉型で装着感よし。交換パッドやケーブルの入手性も確認。
  • DAW:体験版で操作感を試した?プロジェクトの保存先はバックアップ込み?
  • 部屋:エアコンやPCファンの騒音源を把握。カーテンやラグで簡易吸音。

はじめての予算配分の目安

インターフェース 35%マイク 30%ヘッドホン 20%その他 15%